ジャガーEタイプの3Dスキャン
以前、ブログで、自動車の写真を撮りスキャンして3Dモデルを作成する手順について詳細に説明した。/how-does-agora-create-such-accurate-models/実は、その時にスキャンしたのは、実車の1961ジャガーEタイプで、Agoraはそれに基づきモデルを制作した。
ここで、航空宇宙や医療の分野で一般に採用される最先端のテクノロジーが、細かな部分まで精巧なモデルをつくりだすのに、どのように活かされているかをおさらいしよう。
この工程がわくわくするのは、ジャガーが優れたレースカーだからだろう。ジャガーを訪問した日には、胸躍らせながら、86年にわたるジャガーの歴史のなかでつくられてきた精緻な逸品を目にできる貴重で名誉ある機会を存分に楽しんだ!訪問の際には、Agora製の最初のモデルがつくられていくビジョンを目の当たりにした。そして、それは私たちにとってただのモデルではなかった。Eタイプは、1961年にセンセーションを巻き起こした新聞見出しを一言一句体現したモデルだ。筆舌に尽くしがたい逸品!赤いロードスターバージョンは特にすばらしい。なぜか?ダッシュボードを眺め、スイッチをパチッとつけて、バケットシートが快適かどうか想像できる。 そして、運転席に座っている自分を想像する……
But back to the reality of the workshop…
今回、1日かけて拝ませてもらった美しいシリーズ1Eタイプロードスターは、ジャガー・クラシックが所有しウェスト・ミッドランズに保管されていた。この文句のつけようのないマシンは、私たちが開発しようとしているモデルのベースにうってつけだった。まさに思い描いた通りのマシンで、色も同じ。可能な限り高精度の1/8スケールモデルをつくるため、業界の専門企業、フィジカル・デジタル(Physical Digital)のスタッフも同行してジャガーを訪れ、最先端の3Dスキャン技術(カメラ、プロジェクター、ソフトウェア)を用いた作業を行った。
ご想像の通り、適切に段取りするだけでもかなりの時間がかかった。モデルをシミひとつなく完璧に磨き上げ、小さな「参照点シール」を何百枚も貼っていく。この環境は「作業場」というより、もはや「ラボ」。マシンは1960年代のスタイルアイコンというよりは、SF映画のメインキャラクターに見えた。
写真測量の段取りから始まり、表面に印刷パターンを映し出し、青線と黒線のコントラストにスポットを当てる単一帯域のブルーライトのプロジェクターでのスキャン。ソフトウェアは、光線がマシン表面に貼られた参照点シールとどのような位置関係で通過していくかをとらえる。
ジャガーEタイプのボディに投影されるブルーライト
赤い塗装にブルーライトはスキャンしづらい可能性があったが、幸運にもジャガーの塗装ではうまくいった。そうでなければ、反射を避けるためにジャガーにスプレーを吹き付けるか磨かなければならなかったが、それは避けたかった。スキャンに使用する装置よりも、ジャガーのほうがずっと高価なのだ。触れる手数が少なければ、ダメージを与えるリスクも低くなる。
段取りの段階では、点はコード化されていないので、どこも参照していない。下の画像からも分かる通り、緑の点としてコンピュータの画面上に表示される。
ジャガーに貼られたシールから取り込まれた参照点
DSLRカメラで何枚も写真を撮り、光学式バーコードシステムでマシン「周囲」の立体写真を作成する。これが写真測量の段取り段階の肝だ。






システムは次にそれぞれの緑の点を三角形に分割し、一意のコードを割り当てる。下の画像で9つのイメージを表示した大きな十字は、コンピュータが「未知」の点の座標を三角形に分割するのに使用した「既知の位置」の一部を含んでいる。




すべての位置が三角形に分割されると、スキャナーで車の周囲から表面をスキャンできるようになる。毎回、スキャンする度に、三角分割を可能にする最小限の3点を表示するようスキャナーの位置を調整する。この三角分割は他の三角分割と比べて非常に独特な見え方をする。コンピュータは表面を少しずつスキャンし、マシンの3D画像をゆっくりと構築する。
このスキャンシステムと写真測量の技術で、それぞれの点を3D空間に固定する。50ミクロンを上回る誤差がある点では、エラーメッセージが表示される。このように実現される高い精度が、参照点マーカーシステムや写真測量技術を用いないハンディスキャナーなどの精度の低いスキャンシステムとの大きな違いだ。例えば、3.5mの表面で1回のスキャンごとの許容誤差が20ミクロンである場合、ハンディスキャナーではその逸脱は増幅し3mmの誤差となる。これは大した数字でないように思えるかもしれないが、私たちが使用している装置では、逸脱は23ミクロンとなる。つまり、精度は千倍。比較的小さなスケールでパーツを組み立てる必要がある場合は、これは非常に重要だ。
これらの点とスキャンから作成されたポリゴンモデルは別のチームに送られ、そこでリバースエンジニアリングされた後、1/8スケールのジャガーEタイプロードスターモデルのプロトタイプが誕生する。






スキャンしたEタイプ実車から描画されたポリゴンの一部
現在、モデルのフル生産が始まっており、今後も進捗状況をお伝えする予定だ。